全長7kmに及ぶ諫早湾の潮受け堤防が完成し、1997年(平成9年)4月14日、巨大な鉄板がギロチンのように次々に落ちて行き、干拓地を有明海から隔絶した映像は印象的だった――あれから10年以上が経過した。
大きな写真
(1920×1440 ピクセル, 1101 Kbyte)
島原鉄道「吾妻駅」と「古部駅」の間の車窓から、ほんの一瞬だったが、潮受け堤防の南側の水門を見ることができた。
この潮受け堤防を閉じたことによって生態系が破壊されたとする話は、WWFの「諫早湾閉め切りから10年 堤防撤去と干潟再生を求めて」やJST失敗データベース「国営諫早湾干拓事業による漁業被害」に詳しい。
だが10年が経過し、すでに干拓地への入植者が定着し始めている現在、水門を開ければ済むという簡単な話ではなくなってきている。
だが10年が経過し、すでに干拓地への入植者が定着し始めている現在、水門を開ければ済むという簡単な話ではなくなってきている。
10年前のテレビ映像に反し、この距離から見る堤防は、よく見ないと分からないほどの目立たないものであった。
写真の手前が有明海なのだが、干拓地とされる反対側にも水は残っており、「干上がっている」ようには見えないのである。
写真の手前が有明海なのだが、干拓地とされる反対側にも水は残っており、「干上がっている」ようには見えないのである。
近くへ行けば「干上がっている」のかもしれないが、この距離からは何かが変化しているようには見えない。
また、2007年(平成19年)12月、堤防の上に長崎県諫早市高来町と雲仙市吾妻町を結ぶ諫早湾干拓堤防道路ふるさと農道が完成した。長崎県議・野本三雄氏のブログによると、「1日の自動車交通量は計画の4千台を超えて5千台近い」そうである。しかし、時間帯が悪かったのか、それともカメラのズーム性能が悪いのか、車は1台も見えなかった。
また、2007年(平成19年)12月、堤防の上に長崎県諫早市高来町と雲仙市吾妻町を結ぶ諫早湾干拓堤防道路ふるさと農道が完成した。長崎県議・野本三雄氏のブログによると、「1日の自動車交通量は計画の4千台を超えて5千台近い」そうである。しかし、時間帯が悪かったのか、それともカメラのズーム性能が悪いのか、車は1台も見えなかった。
潮受け堤防による環境破壊議論をめぐって
最近、有明海では赤潮が多発、海底には泥がたまるなどして、二枚貝などの漁業資源が大幅に減少したという。2008年(平成20年)8月17日付の日本経済新聞でも特集していた。
農林水産省の出先機関である九州農政局が2005年(平成17年)4月に公表した「有明海の漁業生産及び環境に関するデータについて」によると、堤防を締め切る前と環境は変わっていないようにも読み取れる。マスコミはこの発表はデタラメだと主張している。そこで、ネット上で有明海の海流の変化や水温の変化、海中の有機物やガス成分の変化などを示す「客観的なデータ」を探してみたのだが、これがなかなか見つからない。どなたかご存じの方がいたら、「お便りコーナー」に知らせていただきたい。
それにしても、こんな小さな堤防1つのために、本当に有明海の生態系が破壊されてしまったのだろうか。30億年以上の歴史を誇る地球の生物は、そんなに弱いものなのだろうか。
堤防の影響が皆無というわけではないだろうが。水門を開けただけで環境は元に戻るのだろうか。もし水門を開けても元に戻らなかったら、「水門を造ったことが悪い」という、後出しジャンケンのような批判をされることはないだろうか。
諫早湾の環境問題に対して意見を述べたり議論を展開するのは結構なことだが、双方とも、私たち一般市民に客観的な事実を公開してほしい。
とくにマスコミの映像――この問題に限らないが、生中継でないマスコミの映像は、眉に唾を付けてから見ることにしている。自分もビデオを編集しているから分かるのだが、“やらせ”をさせたり映像自体に加工を施さなくとも、フレームやカット割り次第で、簡単に事実を歪めることができるからである。
フレームやカットの外側にある“真実”は、現場へ足を運び、自分の目と耳で確かめるしかない。現場で見聞しないで物事を判断するのは危険である。
農林水産省の出先機関である九州農政局が2005年(平成17年)4月に公表した「有明海の漁業生産及び環境に関するデータについて」によると、堤防を締め切る前と環境は変わっていないようにも読み取れる。マスコミはこの発表はデタラメだと主張している。そこで、ネット上で有明海の海流の変化や水温の変化、海中の有機物やガス成分の変化などを示す「客観的なデータ」を探してみたのだが、これがなかなか見つからない。どなたかご存じの方がいたら、「お便りコーナー」に知らせていただきたい。
それにしても、こんな小さな堤防1つのために、本当に有明海の生態系が破壊されてしまったのだろうか。30億年以上の歴史を誇る地球の生物は、そんなに弱いものなのだろうか。
堤防の影響が皆無というわけではないだろうが。水門を開けただけで環境は元に戻るのだろうか。もし水門を開けても元に戻らなかったら、「水門を造ったことが悪い」という、後出しジャンケンのような批判をされることはないだろうか。
諫早湾の環境問題に対して意見を述べたり議論を展開するのは結構なことだが、双方とも、私たち一般市民に客観的な事実を公開してほしい。
とくにマスコミの映像――この問題に限らないが、生中継でないマスコミの映像は、眉に唾を付けてから見ることにしている。自分もビデオを編集しているから分かるのだが、“やらせ”をさせたり映像自体に加工を施さなくとも、フレームやカット割り次第で、簡単に事実を歪めることができるからである。
フレームやカットの外側にある“真実”は、現場へ足を運び、自分の目と耳で確かめるしかない。現場で見聞しないで物事を判断するのは危険である。
政治的決断
2010年(平成22年)12月15日、菅直人首相は、潮受け堤防排水門の5年間の開門を命じた福岡高裁判決について上告を断念する方針を固めた。
これにより、農林水産省は2012年度にも長期開門調査を実施、常時開門となる見込み。
2011年(平成23年)6月10日、農林水産省は長期開門調査に向けた環境影響評価(アセスメント)の中間報告を公表し、概算で1077億~82億円の費用がかかると見積もった。
これに対し開門訴訟原告弁護団は「巨大に見積もり過ぎで、あきれる。司法判断を受け、開門の義務を負っているのに本気で開門しようという気持ちがあるのだろうか」と批判した。
2013年(平成25年)11月20日、福岡高裁の確定判決が国に命じた履行期限を迎えたが、林芳正農林水産大臣は「現実問題としては本日中に開門ができるとは言えない状況に至っている」と述べ、期限内の開門を断念したことを正式に認めた。
国が確定判決に基づく義務に従わない「憲政史上初」となる事態に陥った。
2015年(平成27年)11月11日、長崎地裁は、潮受け堤防の排水門の開門差し止めを命じた仮処分決定に対する国の異議申し立てを却下した。
一方、2010年(平成22年)に福岡高裁が漁業被害を一部認め、3年以内に5年間開門するよう国に命じ、民主党の菅直人政権は上告せずに判決が確定した。
この結果、国は、開門する、しないのどちらの立場も取れない板挟みの状態が続くことになる。
これにより、農林水産省は2012年度にも長期開門調査を実施、常時開門となる見込み。
2011年(平成23年)6月10日、農林水産省は長期開門調査に向けた環境影響評価(アセスメント)の中間報告を公表し、概算で1077億~82億円の費用がかかると見積もった。
これに対し開門訴訟原告弁護団は「巨大に見積もり過ぎで、あきれる。司法判断を受け、開門の義務を負っているのに本気で開門しようという気持ちがあるのだろうか」と批判した。
2013年(平成25年)11月20日、福岡高裁の確定判決が国に命じた履行期限を迎えたが、林芳正農林水産大臣は「現実問題としては本日中に開門ができるとは言えない状況に至っている」と述べ、期限内の開門を断念したことを正式に認めた。
国が確定判決に基づく義務に従わない「憲政史上初」となる事態に陥った。
2015年(平成27年)11月11日、長崎地裁は、潮受け堤防の排水門の開門差し止めを命じた仮処分決定に対する国の異議申し立てを却下した。
一方、2010年(平成22年)に福岡高裁が漁業被害を一部認め、3年以内に5年間開門するよう国に命じ、民主党の菅直人政権は上告せずに判決が確定した。
この結果、国は、開門する、しないのどちらの立場も取れない板挟みの状態が続くことになる。
近隣の情報
- 諫早湾の潮受け堤防から10年:ぱふぅ家のホームページ
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参考サイト
- 諫早湾干拓事業:九州農政局
- 長崎大学水産学部
- 干潟・藻場・サンゴ礁調査:環境省
(この項おわり)